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二盃

ここで小咄を一席

私の稼業は飲み屋である。カウンターのある店だが、最近よく来てくれるとあるお客さんとのカウンター越しの話である。

そのお客さん、大概は独りで来るのだが、必ず最初に二杯同じ酒を注文する。飲むスピードが極端に早いために、最初から二杯注文したのかと思ったが、特別早くはない。
気になったので聞いてみた。

私「何故、必ず二杯ご注文されるのですか?差し支え無ければ教えていただけますか?」
客「ああ、これ?これはね、私には親友があってね、お互いに酒が好きで、酒を愛し、よく語り合った仲だったんだよ。
だが、彼は遠い所へ行ってしまった。いや、死んだという訳ではなくてね。仕事の関係で外国へ行ってしまったんだよ。ことによると、もう一生会えないかも知れない。
だからね、酒を飲む時は、彼を思い出しながら、彼と酒を酌み交わしているつもりになっているという訳なのだよ。不思議に思うかね?」

私「いや、素晴らしいお話をうかがいました。真の友人とはかくありたいものですね。」

それから暫くして、またそのお客さんが来店して下さった時、珍しく一杯しか注文がない。また不思議に思い、話かけてみた。

私「今日は一杯しかご注文ではないのですね、先日うかがったお話だと、大切なご友人と酌み交わす意味合いで二杯ご注文だったと記憶していますが。」

客「ああ、よく覚えているね。いや、そうなんだよ。」

私「しかし今日は一杯だけ・・・ことによると、そのご友人に何かあったのですか?ひょっとして、亡くなられたとか?」

客「いや、これはね、私が禁酒しただけなんだよね」

  • 2010.08.22
  • 気らく家

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